ISBN978-4-87662-551-2
鉱山(ヤマ)の仲間とともに
上岡 健司 著
四六判並製・336頁
ISBN978-4-87662-551-2
定価(本体1714円+税)
古河一企業支配の足尾で、不当解雇に毅然と反対し、仲間7人と裁判闘争で完全勝利をかちとった。そして、明治以来鉱害の原点といわれ、煙害被害で裸山と化した足尾町の町議として、古河にものいう民主町政の実現に奔走してきた。
もくじ
・発刊によせて 人生の味、庶民の心 金子満広
・人生の傑作 福嶋 等
・はじめに
・坑内労働者の闘い
・銅山の繁栄と家のくらし
・軍国教育、そして敗戦の混乱
・労働組合運動へ
・不当解雇反対で裁判闘争
・町長・町議選をたたかう
・閉山―町民の団結
・長男の突然死
・?うつ地獄?へ陥る
・3.11東日本大震災後のいま
発刊によせて———————–
●人生の味、庶民の心
日本共産党名誉役員 元衆議院議員 金子満広
『鉱山(ヤマ)の仲間とともに』 』
上岡健司さんの著書、発刊前に原稿を読ませていただきました。
読みはじめたら感動の連続、上岡さんのこれまでの思いと実績、足尾の姿に心がひきこまれ、一気に読了しました。
上岡さんも著書の中で自らの経験を通じて書いていますが、足尾の歴史は「日本一の大銅山、公害の原点、労働運動の先進地」であり、全国から注目された足尾です。
明治以来、闘争につぐ闘争、その国策と結びついた古河鉱業の人権を無視した横暴な足尾銅山の開発、それに正面から立ち向かい、さまざまな困難をのりこえての労働者と住民の生活と人権、平和のためにたたかってきた足尾の人々のことは、全国の民主勢力、日本共産党にとっても大きな歴史的教訓となっています。
上岡さんは、自らの青少年時代の「軍国教育、そして敗戦の混乱」状態、つづいて労働運動・住民運動、そして日本共産党の町会議員として八期連続当選など、地域住民と心をひとつにしてやってきたことなど、この著書になまなましく書いています。
まさに「情・理かねそなえ、花も実もある活動」です。
私が初めて上岡さんと話し合ったのは、今から四一年前、一九七一年足尾町長、町議選の時でした。当時私は、日本共産党本部で幹部会委員、書記局次長、大衆運動委員会責任者でした。衆議院選挙で初当選したのは、その翌年一九七二年でした。以来、落選の時もありましたが、六期一九年、最後は小選挙区・比例代表選で北関東ブロックで当選させていただきました。足尾のこともなつかしく思い出されます。
私はいま八七歳、上岡さんは七九歳、しかも「ウツ病を克服」してのこの著書です。私のことも書かれています。
お互いに過去の経験を、いまこそ生かす時だと思います。
「人生つねに 始発駅」――です。
苦楽をともにした
仲でこそ、わかる
人生の時、庶民の心……
この著書があかるいあすをつくる力になることをねがっています。
(二〇一二年六月)
●人生の傑作
弁護士 福嶋 等
価値ある人生――それは、多くの人に良い思い出を残し生きていくことではないだろうか。
本書は、上岡さんの少年期から今日に至るまでの波乱に富む人生物語である。これほどの多事多難に遭遇する人も珍しいだろう。それら難題を乗り越え成長していく姿、堅忍、才覚、そして周りの人々との交流などのドラマに、私は興奮を抑えきれずに一気に読了した。
上岡さんの生い立ちは、三世代家庭、加えて稼業の建具屋の若い職人たちなどの大家族のなかで始まる。商売は社会の窓でもある。そこは複雑で活気があり、かつ開かれている環境であったに違いない。ここで利発な少年の、人なつっこさ、茶目っ気、そして負けじ魂が育まれたのではないか。
ところが試練は早くからやってきた。一三歳のとき、お父君が急逝し、恵まれていた家庭環境が一転する。せっかくの高等学校の進級を断念し、鋼山の木工所に勤める。奥さんの内助の功をあてに労組活動。やがて思想・信条を嫌う会社に狙われて、一〇名の仲間とともに指名解雇。しかし、宇都宮地裁、東京高裁、会わせて七年間の裁判闘争で勝利解決。私はその弁護団の一員だった。不正に抗する強い意志、そして仲間同志の熱い繋がりが伝わってきて、仕事は楽しかった。
上岡さんはこの間、町会議員に当選、銅山の閉山反対運動の先頭に立つ。民主的町政を実現、東京や京都へ選挙の応援にも出向くなど、政治活動の範囲も拡がる。高校のPTA会長も勤める。その後、うつ病にかかったが、七年余の後ついに克服、いまも地味な活動を続けている。
上岡さんは、足尾の地に腰を据えながら、驚くべき多様な領域を生きた。
若いときのある時点「おれは経済ヤクザにはならない」、そう決心し、金儲けの生き方と訣別、理想を信奉する正義の人となった。けれども上岡さんは、心情の人でもあり、人間理解に長け、人の輪をつくれる人である。高い志をもち友達に恵まれている人は、どんな逆境も耐え忍ぶことができる。本書は、淡々と経験を語ることによって自ずとそのことを悟らせてくれる。
「艱難汝を玉にす」。私は上岡さんの傑作ともいうべき人生に脱帽しました。多くの人々に読んでいただきたい本が誕生しました。とくに若い人に強く推薦します。