民主文学館
司馬遷の妻

四六判上製 187頁 
定価 (本体1,143円+税)
ISBN978-4-87662-553-6

秋の気配をあなたは何で知るだろう

少年の日 兄と弟 ほのかな恋・・・・・
10編の小説世界はそっとあなたの背をたたく

「司馬遷の妻」は、司馬遷が李将軍列伝を書き終えるにあたって、最後の部分に彼にとっては因縁の深い李陵のことを書き加えたいという誘惑にかられて懊悩する姿を描いています。
「孤軍奮闘のあげく匈奴に生け捕られた李陵を唯一弁護した、あの時の自らの弁を今もって信じて疑っていなかったといった方が当たっていたかもしれない。それだけになおさら遷は、李陵の事績を記し、天子にいれられなかった自らの思いを、後世の判断に託したい誘惑に駆られたのである。」
 そんな折、「もう、秋ですわね」という妻の一言が、見るべきものを見ていなかった彼の目を開かせるのでした。

  (牛久保建男「解説」より)