石川啄木 風景と言葉
著者:碓田のぼる
A5判上製 272頁 定価(本体1905円+税)
発行日:2012年3月10日
ISBN978-4-87662-542-0

時代と社会に切り結んだ啄木最晩年の軌跡の一年を検証
「新しき明日」を熱望した啄木像を新たに彫りおこした
没後百年に送る著者渾身の評論集

「あとがき」より

 啄木にとって、歌とは「悲しき玩具」であったとする?風評?は没後の百年間をおおってきた感がある。
 啄木が、時代と社会にどう向き合い、どう世界認識を獲得したかという視野の中に、歌集『悲しき玩具』の作品を具体的にすえて、探求することの弱かった、私を含め、自称、他称の啄木研究家、愛好家の負うべき責任であろうと考えている。
 啄木の歌は、この没後百年を期して、「悲しき玩具」の?風評被害?から救い出さなければならない。そして、時代と社会の展望の中に、啄木のもったまなざしを据え直さなければならない。

石川啄木 風景と言葉―――目次 
? 思想の風景と言葉
  一 啄木観念哲学の形成と破綻
  二 刻苦する明日への思想

? 生活の風景と言葉
  一 風景認識の前進
  二 生活の発展と深化
  三 啄木的世界の発展

? 受容の風景と言葉
  一『生活と芸術』における生活意識
  二『呼子と口笛』はどう響いたか
  三 大阪『啄木研究』の史的位置
  四 石川啄木と平沢計七
    ―「工場法」をめぐる一系譜について
? 歌の風景と言葉
  一 啄木における三つの歌論――状況と歌人
  二 歌論と二つの歌集
  ――その「いま、ここ」をめぐって
  三『悲しき玩具』における真実――表現の「自由」への苦闘