山下悦子 著

四六判・上製本 本体(1500円+税)

 ひとりになった私は、黒に白で十字架をあらわした覆いの一人娘の織香の骨壺と、白の覆いの骨壺に手をかけて、「おはよう」「お休み」というのが行事となった。白の覆いは、織香の死から4ヶ月後に後を追った北海道犬のクウの遺骨である。まるで予告のない竜巻に連れ去られたような織香の2ヶ月をたどってみたいという希求は、日増しに強くなり、その事実を自身に納得させるために他ならなかった。(本書/ほんぶんより)